音楽祭への想い


たとえば、ヨーロッパを旅するなか、古城や教会のある中世の面影を残した街に出会ったとき、どんな人たちがどんな暮らしをしていたか、昔の時代に思いを馳せてみる・・・時を告げる鐘の音、行き交う人々の姿、路地裏に漂うパンの薫り、人々の営みや価値観・・・今とそれほど変わらないものもあれば、随分と異なるものも多くあるだろう。消えてしまったものを、現代の私たちが全く同じ形で体験はできないけれど、絵画、遺跡、写本など、残されてきた歴史の断片を見て、想像することはできる。そこから新しい気付きを得たり、現代を今までとは違う視点で捉えるようにもなったりする。ときには、自分に取り込んで、まったく新たなものを生み出すこともできる。

では、昔の音楽は・・・どんな人たちがどんな風に演奏していたのだろう。残っている昔の楽譜や書物の言葉から、当時の音を想像する。復元楽器を自ら演奏してみる。今の自分たちの心に共鳴する音を探る。そこから生まれた音に、当時の空気や光を感じたり、新しい音の可能性が開けたりもする。そして、枯れない泉のように、知れば知るほど探りたいものが出てくる。「古楽」に足を踏み入れた人たちの多くが、古楽をやめられず長年続けているのは、そんな醍醐味があるからかもしれない。

中世・ルネサンスの時代に、城や教会や農村など、さまざまな場面で奏でられ親しまれてきた楽器や音楽は、時代の流れとともに変化し、あるものは消滅し忘れられてしまった。

それらの埋もれていた音たちに耳をかたむけ、再現し、命を吹き込んできた、古楽研究家や古楽愛好家たち。彼らの深い情熱と多大な努力なくしては、今の古楽はありえなかっただろう。
そんな古楽に関わる全ての方々に、尊敬と感謝の気持ちをこめ、そして中世・ルネサンス音楽の悦びを当時の文化とともに多くの方々と分かち合えることを願って、この音楽祭を開催したいと思う。

~第一回 中世ルネサンス音楽祭 序文より~
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by medievalsalon | 2013-08-19 22:10 | 音楽祭
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